このことに加えて，私につき従っている若者たち-彼らは非常な金持ちの子
弟であり，暇も随分あるのだが-自分から人々が吟味されるのを聞いて喜ん
でいるのです。そして自分たちがしばしば私の真似をし，それから他人の吟味
を試みるのです。そしてそういうことをした後で思うに彼らは何かを知ってい
ると思っているが，実は本のわずかしか，あるいはまったく何も知らない人間
たちが無闇に多いことを発見したのです。その結果彼らによって吟味された人々
は自分たちには腹を立てないで私に対して腹を立てるのです。そしてソクラテ
スという奴が最もけしからぬ人間であり，若者を堕落させていると言うのです。
そして彼らにソクラテスが何をし，何を教えることによってなのかと尋ねる人
がいても，彼らは何も答えられず，つまり知らないのです。他方で彼らは答え
られないでいると思われないように，知を愛する人々すべてについてのこういっ
た手近なことを言うのです。「天上や地下のこと」とか「神々を信じていない」
とか「弱論を強弁する」などとね。というのは彼らは真実，つまり知っている
振りをしているが実は何も知らないのだということが明らかになることを語り
たくないからだろうと思うのです。そこで彼らは負けん気が強いし気性も激し
く数も多いから，私について組織的に説得力を持って語り，以前から激し
く非難して君たちの耳を一杯にするのです。ここからメレトスも，そしてアニュ
トスやリュコンも私を攻撃したのであり，メレトスは詩人たちに代わって，ア
ニュトスは手仕事職人たちや政治家，リュコンは弁論家たちに代わって憤慨し
ているのです。その結果として，私が最初に言ったように，もし私がこんなに
短い時間でこれほどまで多くなってしまった以上のような中傷を君たちから拭
い去ることができたなら私は驚いたことでしょう。そのことは，アテナイ人諸
君，真実なのです。そして私は大にも小にも包み隠すこともしらばくれること
もなく君たちに話している。とは言え，私はまさにこのことで憎まれているこ
とはよくわかっているし，それこそ，私の言っていることが真実であり，
私への中傷とは以上のようなものであり，その原因もまたかくの如くであると
いうことの動かぬ証拠でもあるのです。そして君たちが今でも今後でもそれを
調べるなら，見出すことは同じでしょう。