パウサニアス演説

エロースとアプロディテーは切り離せないものであって，アプロディテーは二 人いるから，エロースもまた二人いる。

1. アプロディテー・ウーラニア・・・・エロース・ウーラニオス
2. アプロディテー・パンデーモス・・・エロース・パンデーモス

また行為というものはそれ自体としては善でも悪でもないが，その仕方によっ て善とも悪ともなる。したがって美しい仕方で愛し，愛されるのがエロース・ ウーラニオスの働きであり，この神のみが称賛されるに足る。しかし美の基準 は国によって異なるのであって，それは次の三つに分類できる。

1. エリス・ボイオティア・ラケダイモン：愛してくれる者を受け入れるこ とは美しい。
2. イオニアその他ギリシア人以外が支配しているところ：それは醜い。
3. アテナイ（とラケダイモン¹⁵）：複雑。

アテナイにおいてエロースは複雑であるというのは次のような事情があるから である。

1. 公然と人を愛する者は人々から称賛される。
2. 愛される者の父兄は愛を受け入れることは醜いことだと注意する。

そうするとアテナイではエロースとは愛される者が愛する者を吟味するという 一種のテストの経験である。ではいかなる基準で吟味すべきか。

1. すぐれた人柄への愛
2. 肉体・財産その他のものへの愛