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• 勇気と知識の関係の議論──その１（第33-34章）

徳の一性についての問答──その２（第33-39章）

勇気と知識の関係の議論──その１（第33-34章）

348d 二人してともに道行けば

ホメロス『イリアス』10.218-247.

こういうと，一同全部，固唾をのんで静まりかえった。その人々に向 かって，雄叫びも勇ましいディオメーデースがいうよう，

「ネストールよ，私の勇気と，誇らかな意気込みとが私をうながして， 近くにある敵陣へ，しのび込めと奮い立たせる，トロイア方の陣営です が。ところで誰か，もう一人一緒に来てくれたら，心丈夫でもあります し，大胆にもなれようと思うのです。二人で一緒に出かけてゆけば，た がいにすばやく様子をうかがい，都合のいいよう工夫ができる，だが一 人では，たとえ気がついても，とかく不行届きで，計略も，手薄なもの になりがちですから」

こういうと，大勢の者が，ディオメーデースについていこうと申しで た，そのうちには二人のアイアースがあった，二人ともに軍神アレース の従者である。それにメーリオネースも志願すれば，ネストールの息子 もとくに頼んで志願をする。アトレウスの子の，槍の名手のメネラーオ スも参加を望めば，辛抱づよいオデュッセウスもトロイア軍の陣中に潜 行したいと望んで出た，というのも，心に，いつも冒険を好んでいたの で。その人々のあいだに立って武士たちの君アガメムノーンがいうよう には，

「テューデウスの子のディオメーデースよ，おまえはよくよく私の気に 入った者だ。では誰なりと，望みの者を仲間に選ぶがよかろう，志願者 中での最適任者を。行きたがるのは大勢いるから。心中に遠慮をして， 適当なものを置いていったり，また家柄を見て，こちらのほうが位が高 いなど考え，情誼に負けて，不適任者を採用してはなるまい」

こういったのも，つまりは亜麻色の髪のメネラーオスのために心配し たからだった。その人々に対し，ふたたび雄叫びもいさましいデイオメ ーデースがいうよう，

「もし本当にあなたたちが，私に自分で連れをえらべといわれるならば， どうして神々しいオデュッセウスを忘れることができましょう。彼の心 は，どんな骨折り仕事にも，ことのほか熱心でして，とくに雄々しい気 象のうえに，パラス・アテーネーのお気に入りです。このかたがついて 来るなら，たとえ燃えさかる火の中からでも，二人とも無事に戻れまし ょう，ひとにすぐれた分別をお持ちですから」

残る議論は次の通り。

第35-37章

快苦と善悪の関係の議論

第38-39章

勇気と知識の関係の議論──その２

第40章

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